今年の6月に金融庁の森信親長官の続投が決まりまして就任3年目に突入しております。ご存知の通り、森長官は2015年の就任以来、「金融行政改革」を掲げ、金融機関の統治改革や営業姿勢の転換を促す政策を進めており、今回の続投で改革路線をさらに加速させることでしょう。

さて、8月下旬に経済紙などを中心に「検査局」が廃止という報道が一斉にされました。「森改革の最終段階か?総仕上げか?」などと言われています。具体的には、来年7月の組織再編で「検査局」を廃止するとのことです。検査局とは、金融機関の立ち入り検査を担ってきた部署です。ドラマ半沢直樹にて、片岡愛之助さんが演じた「金融庁のオネェ検査官・黒崎駿一」という役柄があったと思います。あの人達が所属している部署ですね。その検査局ですが、これまで金融機関に対して厳格な査定をして、不良債権処理を強く推し進めてきました。「金融検査マニュアルに書かれていないことはするな!という誤解を生んで、金融機関を思考停止に陥らせた」などと言われています。今後は「金融処分庁」から「金融育成庁」への脱皮を図ろうとしているのが現在の金融庁の方向性です。

「検査局」は、旧大蔵省の「金融検査部」が前身です。皆さんは、1998年の「大蔵省接待汚職事件」をご存知でしょうか?「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」といえばピーンとくる方も多いと思われます。これが大蔵省解体のきっかけとなりました。この事件には多くの金融検査部の責任者などが関係しており、実際、処分されています。その後、1998年に金融監督庁の発足に伴い、大蔵省大臣官房「金融検査部」から金融監督庁「検査部」 に組織変更されます。2000年に金融監督庁は、現在の「金融庁」に改組されます。

このように多くの話題を振りまいてきた「検査局」が廃止される、ということは大きな出来事だと感じます。近年、大手銀行などの不良債権比率が1%を切るなど、健全性が大幅に改善されています。そういう状況において、独立検査のみを行う部署の必要性が年々低下していったわけです。

今回の再編の目玉は何といっても、「検査・監督の一体化」です。検査局は廃止されることになりましたが、“機能”は「監督局」に移管されることになりました。検査局のうち、サイバーテロや金利変動リスクの分析など高度な専門性を伴う検査は新設する「総合政策局」に移管されます。

金融検査マニュアルはどうなるか?中小企業融資の方向性は?

検査局には「金融検査官」がいます。金融検査官が実施する金融検査に関するマニュアルのことを「金融検査マニュアル」といいます。これまで、企業の銀行交渉にも役に立った資料でもあります。この「金融検査マニュアル」については「廃止」されることが決まっています。

大手メディアによりますと「検査官の手引書の金融検査マニュアルに替わる新たな検査指針を9月にも公表する見通し」、「新たな検査手法を示したハンドブック(仮称)を策定し、来春以降の運用を目指す」と報道されました。

また、ある業界新聞によりますと、「来夏、検査マニュアル廃止」、「検査マニュアルに代わる指針については内部で激論を交わしている」とのことです。メディアによって多少内容が異なります。

どちらにしろ、金融行政が大きく変わっていることは事実です。この流れに企業も敏感になるべきです。端的に指摘しますと、今後は「事業性評価融資」が重視されるようになります。だからといって従来の「財務、業績、決算」重視という視点が無くなるわけではありません。この点を何卒勘違いしないようにしてください。今後は、金融機関との積極的なコミュニケーション、情報公開などが重要です。経営者の皆さんには、その点について、強く意識して頂きたいと思います!